ある企業の管理職が、母親の介護のために実家で泊まり込む生活を続けていました。会社も以前から事情を把握していましたが、負担を軽くする支援につながらないまま、本人は仕事との両立が難しいと考えるようになっていました。

BanSowへの相談で今後の見通しを共有し、ひとまず安心していただけたものの、退職を防ぐことには至りませんでした。

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実家に泊まり込み、自宅に戻るのは週に一度

ある企業で管理職を務める男性が、お母様の介護を担っていました。母親の暮らす実家は、自宅から片道40〜50分ほどの場所にありました。

ご本人は実家に泊まり込み、週に一度、洗濯物を取りに自宅へ戻るほかは、母親の面倒を見る生活を続けていました。自分の家に戻る機会そのものが限られていたのです。

仕事上の責任を担いながら、仕事以外の時間も介護を引き受ける。そうした生活の中で、ご本人の疲弊は大きくなっていました。

デイサービスの利用だけでは、夜間や週末を支えきれなかった

お母様が利用していたのは、日中に施設へ通うデイサービスでした。夜間や週末の介護は、ご本人が一人で担っていました。

介護サービスを利用しているという事実があっても、それでご本人の生活全体が支えられていたわけではありません。実家に泊まり込み、日中以外の対応も引き受ける生活が続き、負担が積み重なっていました。

この相談を振り返るうえでは、どのサービスを使っているかに加えて、利用していない時間を誰が支え、ご本人が休める余地があるかまで見る必要がありました。日中の支援だけでは見えにくい、夜間や週末の生活に大きな負担がありました。

人事は事情を把握していたが、具体的な支援につながらなかった

会社の人事担当者は、以前からご本人とよく話し合い、介護の事情を把握していました。今回の相談で聞いた説明では、人事が事情を知ったのは約2年前からでした。

面談を重ねていても、介護に関する専門的な知識や経験が十分になく、負担を軽くする支援につなげられずにいました。ご本人も会社も、現在利用しているサービスで生活を支えられるのか、ほかに検討できる支援があるのかを判断しづらい状況でした。

会社が従業員の事情を知り、話を聞いていたことは確かです。そのうえで、泊まり込みの生活や夜間の対応まで含めて介護の体制を見直すところには、つながっていませんでした。

相談で今後の見通しを共有し、ひとまず安心できた

BanSowに相談がつながった時点で、ご本人は、この職場で働き続けながら介護をすることは難しいと考えていました。すでに負担が大きくなり、仕事との両立を続けられないという思いに至っていたのです。

相談の中で、ご本人が大きく心配していたのは、母親が今後どうなっていくのかということでした。立山は、その先の見通しを説明しました。

今後について説明を受けたことで、ご本人にはひとまず安心していただくことができました。先が見えない心配に対して、見通しを共有できたことは、この相談で実際に届いた支援です。

退職は防げず、会社は管理職を一人失った

一方で、相談を通じて安心できたことが、仕事と介護の両立を続けられる結果に結びついたわけではありません。ご本人は退職し、会社は管理職を一人失いました。

会社が以前から状況を把握していたにもかかわらず、生活の負担を軽くする支援へ早くつなぐことができず、退職に至った相談として振り返っています。

もっと早く、生活全体を支える方法を検討できていれば

立山は、もっと早い段階で訪問看護やショートステイなどを検討できていれば、ご本人の負担を軽くできた可能性があると考えています。特に、夜間や土日も一人で介護を担う生活を、どのように支えられるかが大切な点でした。

これは実際に導入したサービスの報告ではなく、相談を振り返って考えた支援の選択肢です。これらの支援があれば必ず退職を防げた、という結果を示すものでもありません。

人事担当者が事情を知った段階で専門家にもつながり、泊まり込みの状況や、現在のサービスで補えていない時間を一緒に確認できていれば、別の支え方を検討する余地がありました。従業員が両立を断念する前に、生活の実態を具体的な支援の検討につなげること。その大切さが残る事例です。